遺言執行
遺言のご相談が増えています。
信託銀行に依頼すると、とんでもない手数料がかかるとのことで、税理士にご相談される方も多いと思います。
その際、遺言執行人になってほしいと、頼まれることもあります。
おそらく、同業の方や他士業の方も同様と思いますが、遺言執行人の義務について、頭に入れてから、ご相談を受けた方が良いと思い、こちらに判例をアップします。
東京地方裁判所平成19年12月3日判決
判決要旨1
民法によれば,遺言執行者は,遺言者の相続人の代理人とされており(民法1015条),遅滞なく相続財産の目録を作成して相続人に交付しなければならないとされている(民法1011条1項)ほか,善管注意義務に基づき遺言執行の状況及び結果について報告しなければならないとされている(民法1012条2項,同法645条)のであって,このことは,相続人が遺留分を有するか否かによって特に区別が設けられているわけではないから,遺言執行者の相続人に対するこれらの義務は,相続人が遺留分を有する者であるか否か,遺贈が個別の財産を贈与するものであるか,全財産を包括的に遺贈するものであるか否かにかかわらず,等しく適用されるものと解するのが相当である。しかも,相続財産全部の包括遺贈が真実であれば,遺留分が認められていない法定相続人は相続に関するすべての権利を喪失するのであるから,そのような包括遺贈の成否等について直接確認する法的利益があるというべきである。したがって,遺言執行者は,遺留分が認められていない相続人に対しても,遅滞なく被相続人に関する相続財産の目録を作成してこれを交付するとともに,遺言執行者としての善管注意義務に基づき,遺言執行の状況について適宜説明や報告をすべき義務を負うというべきである。
判決要旨2
例えば,相続財産に不動産が含まれていて,遺言執行者がこれを換価する場合,登記手続としては遺言執行者の単独申請によって被相続人名義から相続人名義への相続による所有権移転登記手続が可能であり,相続人がこれに直接関与する必要はないのであるが,相続人が登記名義人となることは事実であるから,本件のように,相続人の知らないうちに,形式的に相続人に対して譲渡所得税や不動産取得税や固定資産税等が賦課される可能性があり,最終的には是正されるとはいえ,相続人を驚かせ,混乱させ,自己の印鑑が盗用されたのではないかなどと不安に陥れる可能性があることは明らかである。
そうである以上,遺言執行者は,相続人が何らかの事情によって被相続人が遺贈をしていることを知っていることを把握している場合や,相続財産が動産や現金等だけで不動産を含まず,即時取得(民法192条)の規定などによって第三者も保護されるような場合でない限り,相続人が不測の損害や不利益を被ることがないよう,前述の遺言執行者としての善管注意義務(民法1012条2項,同法645条)の一内容として,相続人に対し,遅滞なく遺言執行者に就任したことを通知するか,又は,相続財産に属する不動産の換価処分に先立って当該不動産を遺言により換価処分する旨を通知しなければならないというべきである。
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